シナリオ

加護咲ウルフさんが『ヤマブキシティのジムやぶり!』に続き執筆した幻のオリジナルフルボイスドラマ用脚本『ワールドカップ検定試験!?』をシリーズ完結記念として特別大公開!

 

《Aパート》
○昼:森の中

 エレブー一行、森の中を歩いている。

エレブー「ふへー、この森なかなか広いな。本当に着くのか不安になってきたぜ……」
ナレーション「エネコロロの屋敷をあとにしたエレブー一行は、フエンタウンに向かうべく、森を進んでいた」
ルカリオ「しかし、そろそろこの森もなだらかになってきた。エネコロロの言うとおり、森を抜けるまでにそう時間はかからないのだろう」
ピカチュウ「ずっと森の中だからね。時間の感覚がなくなってるっていうのもあるかもしれないね。実際……」

 ピカチュウ、あからさまにテンションが下がっている様子で呟く。

ピカチュウ「僕も、何年もこの森にいた気がしてきたよ……」

 エレブー、イライラを噴き飛ばすかのように叫ぶ。

エレブー「あーっ! こうやってグダグダやっててもしょうがねえ!
 ピカチュウ! ルカリオ! 早くこの森抜けるぞ!」

 エレブー、二人より早足で先に進む。

ルカリオ「おい、エレブー!」

 エレブーの姿が遠ざかってゆく。

ピカチュウ「まったく、しょうがないな、エレブーは……」

 二人、沈黙する。

ピカチュウ・ルカリオ「……」

 沈黙のなか、ピカチュウが先にルカリオに話しかける。

ピカチュウ「……ねえ」
ルカリオ「何だ?」
ピカチュウ「僕たち、本当に優勝、できるのかな? だんだん心配になってきたよ……」
ルカリオ「まあ、ピカチュウが心配する気持ちも分からないでもない。なにしろ、「あれ」だからな……」

 エレブー、遠くから二人に声をかける。

エレブー「おーい、早くしないと置いてくぞー!」
ルカリオ「何でもない! すぐに行く!」
ピカチュウ「やれやれ……」

ピカチュウ「こんなんでジム戦、ちゃんとやっていけるのかな……」

ナレーション「一抹の不安を感じるピカチュウとルカリオ。そんなエレブー達が見つけたものは、ある一つの施設だった」

ピカチュウ「ねえ!」
ルカリオ「! なんだ?」
ピカチュウ「あれ……」
エレブー「ん?」

エレブー「……なんだありゃ?」

エレブー「オリジナルフルボイスドラマ」
ルカリオ「ポケットモンスター ポケモンウォーズ」
ナレーション「外伝」
ピカチュウ「ワールドカップ検定試験!?」

○試験会場 受付前

ヤミカラスA「よーこそー! 受付の方ですか?」
エレブー「ちげーけど……」
ヤミカラスA「あれっ? そ、そーなんですか!?」
ルカリオ「私達は偶然ここを発見してやって来ただけだ」
ヤミカラスA「そうですカァ。残念ですゥー」
ピカチュウ「試験会場?」

ヤミカラスA「当方、つい最近設立された施設でございまして……」
ヤミカラスA「ワールドカップ検定試験という、ポケモンバトルワールドカップにおける新制度の実施施設となっております」

エレブー「検定試験だぁ?」
ドンカラス「はい」
ルカリオ「それは、具体的にはどういうものなのだ?」
ヤミカラスA「はい、それは別の者が説明いたします。おーい!」
ヤミカラスB「ハイハーイ、ではわたくしが説明いたしますゥー」

ヤミカラスB「ワールドカップ検定試験とは、ジム戦にどうしても勝てない、戦えない、仲間を集められない、という方のために新たに作られた新制度でございます!」
ピカチュウ「え? 今そんな制度あるの?」
エレブー「今まで知らなかったのかよ……」
ルカリオ「最近設立されたと言っていただろう」
ヤミカラスA「そうなんですよ〜」
ヤミカラスB「挑戦者からジムリーダーが強すぎると苦情がきまして、それで救済措置としてこのような機関を作ろうということにあいなりまして」
ルカリオ「……」
ルカリオ(検定試験か。どうも、いやに話がうますぎると思うんだが……そもそも今年新たに開催されたはずの大会にそのような制度が急に作られるものだろうか?)
ピカチュウ「……」

 ルカリオ、ピカチュウに小声で耳打ちする。

ルカリオ「ピカチュウ」
ピカチュウ「何、ルカリオ?」
ルカリオ「おかしいと思わないか? ポケモンバトルワールドカップは今年新たに始まった大会のはず。何故突然このような制度ができたんだ?」
ピカチュウ「確かに少しは……でもでも、初めての大会だからそういう調整みたいなことしてるってことはない?」
ルカリオ「確かにそういう可能性もあるが……」
ピカチュウ「それに、これはチャンスだと思うんだよね」
ルカリオ「チャンス?」
ピカチュウ「正直さ、今のエレブーじゃあ、バッジどころかジム戦にも勝てないんじゃないかって思ったんだよね。ヤマブキジムじゃいいセン行ってたけど……」
ルカリオ「いや、しかしあのスリーパーに善戦していた。それにオーダイルの時も——」
ピカチュウ「うん、確かにエレブーは強いし、これからもっと強くなる可能性はある。僕もそう思ってるよ。でもさ……」

ピカチュウ「明らかにふざけすぎなんだよね……」
ピカチュウ、どんよりとする
ルカリオ「ああ……それは、確かに……」

ピカチュウ「今までのエレブーを見てるとさ、ジムに着く前に大変なことになる……そんな気がするんだよね……」
今までのエレブーの行動がフラッシュバックされる
ピカチュウ、声が震えている
ルカリオ「否定、できんな……」

ピカチュウ「だからさ、それならいっそ試験に合格させて少しは有利になったほうがいいと思うんだ。
 試験がどんなのかはわかんないけど、救済制度っていうくらいだからバッジひとつやふたつ分は免除してくれるんじゃないかな?」
ルカリオ「しかしそれは合格しての話だろう? エレブーが合格できなかったらどうするんだ?」
ピカチュウ「……他はともかくバトルならエレブーは信用できそうかなって。僕はマネージャーとしていつも隣で見てきたからね。
 ザングースやスリーパーはともかく、生半可な相手ならエレブーの右に出るやつはいないよ」
ルカリオ「……」
ルカリオ(まったく……ピカチュウはエレブーを信用してるのかしてないのかわからないな……
 ま、心の底では信用しているのだろうな……でないと今日まで一緒にいないだろう)

 ピカチュウ、受付のヤミカラスに話しかける
ピカチュウ「ねえ、合格したらどこまでサポートしてくれるの?」
ヤミカラスB「はい。試験に合格すると、この検定バッジが与えられ、それを持っていれば検定枠としてワールドカップ出場の権利が与えられるのです!」

沈黙
画面真っ白

ピカチュウ「……えっ、なんて?」
ヤミカラスB「ワールドカップ出場の権利が与えられるのです」
ピカチュウ「じじじじ、ジム戦免除!?」ピカチュウ、絶叫
ヤミカラスB「そ、そうですね。ジムバッジがなくともこのバッジが出場権になるためここで合格すれば、他のジムへ挑戦しバッジを獲得しなくてもよくなります。合格すれば、ですけどね」ヤミカラス。耳あたりをふさぐ。
ピカチュウ「……」

ピカチュウ(え? これ、本当にチャンスなんじゃない? これがあればパーティー集めるだけでワールドカップ出場!?
 それならジム戦を挑む必要がなくなるし、ワールドカップまでの修行期間も伸びる。いける! いけるよこれ!)
ピカチュウ、心の中でガッツポーズ

 ピカチュウ、受付のヤミカラスと何やら延々と話している。
ピカチュウ【アドリブ】
ヤミカラス【アドリブ】
ルカリオ(まったく……ピカチュウにも困ったものだ。
 こんなうまい話、そう簡単にあるはずがないだろうに……それに……)

 他のポケモン達もヤミカラスと話しており、中には怪訝な顔をしている者も。
ヤミカラスC【アドリブ】
受験者【アドリブ】

ルカリオ(結構怪しんでいる奴はいるようだしな……)

 フウ、とため息をつき、ルカリオが話をしていたピカチュウに話しかける。
ルカリオ「……で? どうするんだ?」
ピカチュウ「よし! うちのエレブーとルカリオがこの試験受けるよ!」
ルカリオ「!! ピカチュウ、本気か!?」
ピカチュウ「うん! もし合格すればジム戦を受けなくて済む。これはいいアドバンテージになるよ!」
ルカリオ「しかし、やはり私は自分自身の実力でだな……」
ピカチュウ「実力はこの試験で示せばいいんだよ。ジム戦を免除できるほどの試験ってことは、それほど過酷なものかもしれないし、それに合格すればその実力は既にあるって証明されるってことじゃん!」
ルカリオ「いや、それならばその実力をジムでだな」
ピカチュウ「ルカリオ、時は金なり、だよ? いくら実力が高くても負けっぱなしだと時間はなくなるばっかり
 それに……」

エレブー「お姉さま、今日僕とひとつどうですか?」
女性A「え!? なんなんですかあなた!」
 エレブー、女性をナンパしている
ピカチュウ「エレブーがこんなんだし」
ルカリオ「……」

ピカチュウ「エレブーとルカリオがこの試験受けます!」
ルカリオ「おい、ピカチュウ!」
ヤミカラスA「はい、エレブー様とルカリオ様ですね。では、番号札を持って受験者室へどうぞ〜」
ルカリオ(ダメだ。すっかり舞い上がっている。それにいつもは静止役のピカチュウがここまで冷静さを欠くとはな……いや、たまに欠いてたが)
 ピカチュウのあれこれがルカリオの脳内でフラッシュバックする
ヤミカラスA「では、受験料4万5千ポッケいただきます」
ピカチュウ「……お金取るの?」
ヤミカラスB「取らないと運営がままなりませんからねェ」
ピカチュウ(どうしよう……そんな大金……時は金なりって言ったけど、結局のとこ時より金だし……
 でもエレブーのことやルカリオの負担を考えると……
 ええい! なに言ってるんだ僕! 決めただろ! 試験受けるって!)
ピカチュウ「……わ、わかり、ました……」
 ピカチュウ、手と声が震えている。
 ポッケを出しているがほとんど出せていない。
ヤミカラスA「はい確かに」
ピカチュウ「あっ!」
 ピカチュウが出したポッケを瞬時に受け取り懐にしまうヤミカラスA
ヤミカラスB「では、お二人がた、受験者室へどうぞ」

 ルカリオ、半ば呆れた様子で
ルカリオ「まったく……」
ルカリオ「……」

 エレブー、まだ女性をナンパしている
エレブー【アドリブ】
女性B【アドリブ】
 ピカチュウ・ルカリオ、バッとエレブーの方を振り向く

SE:打撃音
フェードアウト

○廊下
ピカチュウ「まったく……先が思いやられるよ」
ヤミカラスB「あ、あなたは受験者ではないので受付で待機していてください」
ピカチュウ「あ、はい。わかりました」

 エレブー、頭にたんこぶができている。
エレブー「いつつ……殴ることねーだろうが。ってかどこ行くんだ?」
ルカリオ「ワールドカップ検定試験の会場だと」
エレブー「試験?」

場面転換

○受験者室
エレブー「試験に合格したらワールドカップの出場権免除ぉ?」
ルカリオ「……だそうだ」
エレブー「ピカチュウめ余計なことを……俺としては実力で勝負したかったのによー」
ルカリオ「私もそう言ったのだがな……」
エレブー「ま、それならそれで本気でやるけどな。何でも手加減はしたくねぇし!」
ルカリオ「……そうか」
ヤミカラスC「受験番号106、受験番号107、第一試験会場へ移動してください」
エレブー「106……俺じゃねえか」
ルカリオ「107は私か。連番なのが救いだったな」
エレブー「ま。しゃーねー。ちゃちゃっと終わらせてくるか!」

場面転換

○第一試験会場

エレブー「筆記試験なんて聞いてねえぞ……」
エレブー(俺バトルは得意だけどこういうのは苦手なんだよ……!)
エレブー「なになに? キャタピーが進化するとバタフリーになる? おいおいバカにすんなっての。そんなのバツに決まってんじゃん。
 で、コイキングははねるしかできない、か。これはマルだな。
 えと、それから……」

 ルカリオ、問題を解いている。
 遠くから試験管とエレブーの声が聞こえてくる。
試験管「そこ、ブツブツうるさいぞ!」
エレブー「いてっ!」

ルカリオ「……」
ルカリオ(筆記試験とはいえ、ポケモンに関する基本的な知識ばかりか……この程度ならエレブーでもそこそこの点数は取れるだろう)
ルカリオ(問題は次の試験。おそらくバトルだ……どんな相手が出てくるから分からんからな……
 もしこの試験が本当にあるものならば、ジム戦を免除するに値するだけの相手が出てきてもおかしくはない……多少の覚悟はしておくべきだろうな)

場面転換

○受験者ロビー
 エレブー、D判定
 ルカリオ、B判定
エレブー「……」
ルカリオ「お前、今まで一体何を学んできたんだ……?」
エレブー「いや……俺さ、昔からバトルに明け暮れてばっかでさ……師匠とも修行とかばっかだったし。ニュースも全然見ないし」
ルカリオ「まったく……」
エレブー「それに、多分次の試験はバトルだろ? バトルは俺の得意分野! そっちで挽回してやるさ!」
ルカリオ「……」
 ルカリオ、微笑しながら背を向ける
ルカリオ「まったく、お前にはいつも励まされるよ」
エレブー「……ルカリオ、お前……」
 BGMが止まり、素っ頓狂なSEが流れ
ルカリオ「お前の能天気さを見てると、こういう奴もいるんだなと清々しさすら感じるよ」
エレブー「お前なーっ!」
 エレブーとルカリオ、痴話喧嘩
エレブー【アドリブ】
ルカリオ【アドリブ】
 それを尻目に怪しげな笑みを浮かべる影
影(ドンカラス)「……クク」

○第二試験会場

 屋外。受験者たちが賑わっている
受験者たち【アドリブ】

エレブー「第二試験会場は屋外かー」
ルカリオ「しかしなかなかに……」

ルカリオ「狭いな」
エレブー「ああ。まるで公園の裏みてーだ」

ヤミカラスD「第二試験会場へようこそ! 第二試験のルールはいたって単純明快! バトルの能力を測ってもらいます!
 測定方法は、我々が用意した試験管と戦う。ただそれだけでございます!
 そしてその戦いぶりを判定し、筆記試験の結果と合わせて最終結果として発表いたします!」

 沸き立つ受験者たち
受験者たち【アドリブ】

エレブー「やっぱバトルか。それなら楽勝だな!」
ドラピオン「果たしてそう余裕でいられるかな?」
エレブー「ん、なんだよ。お前が試験管か?」
ドラピオン「ああ。俺が君のバトルの相手さ。試験とナメてかかってると……病院に行くハメになるぜ。そもそもここは街からは遠い森の中。病院に行く前に最悪死ぬかもしれないぞ?」
エレブー「そこまで言うってことは相当自信があるってことか。なら俺も全力でぶつかるだけだ! 来いよ!」
ドラピオン「言われなくともな! クロスポイズン!」
 クロスポイズンを間一髪で避けるエレブー
エレブー「うお、危ねえ!」
ドラピオン「ほお、俺の攻撃を避けるとは、なかなかやるな」
エレブー「お前の攻撃も結構早いじゃねーか。よっしゃもっと来い!」
ドラピオン「言われなくとも!」
 ドラピオン、エレブーに突っ込んでいく

場面転換

ケンタロス「吹雪!」
ルカリオ「く……!」
 ルカリオ、吹雪を防御の体制で受けている。
ケンタロス「どうした? この程度の吹雪も耐えられないようならばワールドカップなど夢のまた夢だぞ!」
ルカリオ「確かにキツい……が! このぐらいなら、吹き飛ばせる!!」
ケンタロス「真空波!!」
 ルカリオ、真空波で吹雪を吹き飛ばす
ケンタロス「……吹雪を吹き飛ばす、か。なかなかのパワーのようだな。それではお次は……これだ!」
 ルカリオの上空が曇り始め、雷の音がなりはじめる
ルカリオ(雷雲……? これは……!)
ケンタロス「雷!」
 雷がルカリオに直撃する。

場面転換

エレブー「おりゃおりゃおりゃ!」
 エレブー、ドラピオンに拳のラッシュ。ドラピオンはそれをすべて受けている
ドラピオン「……その程度か?」
エレブー「なっ!」
ドラピオン「毒突き!!」
 毒突きがエレブーの腹に直撃する
エレブー「ガッ!」
 エレブー、反動で後退するが踏ん張りながら耐える
エレブー「へへ……なかなかやるじゃねえか」
ドラピオン「俺の皮膚はそんじょそこらの奴とは違って鍛えてんだ。チャチな攻撃じゃビクともしねえ」
エレブー「へへ、さすがにそう簡単に倒されるわけにはいかないってか? 上等だ!」
ドラピオン(たりめーだ。そう簡単に負けてやれるかっての。特に俺たちはな……)
ドラピオン「減らず口は俺に傷をつけてから言うんだ……なッ!」
エレブー「おっと」
 エレブー、ドラピオンの攻撃を避ける
 そして、背後に視線を寄せる
エレブー(後ろには頑丈そうなネットか……リングアウト防止か?
 でも、これならいける! チャチな攻撃で倒せねえなら、チャチじゃねえ攻撃をすりゃいいだけだ!!)
エレブー「……へへ」
 エレブー、笑みを浮かべる
ドラピオン「何がおかしい?」
エレブー「アッハッハッハ! おかしいもおかしいぜ! こんな攻撃で俺を倒せると思ってることがな!
 ……本気の本気で来いよ。俺も、全力でぶつかってきてやるからよお!」
ドラピオン「……」
ドラピオン(こいつ……俺をおちょくってんのか……? いいぜ、そっちがその気なら……)
ドラピオン「いいぜ! 即病院送りにしてやんよ!」
エレブー「次は、こっちから行くぜぇ!」
 エレブー、ドラピオンに真っ向から突撃する
ドラピオン(バカめ! ガラ空きだ!)
ドラピオン「毒突きぃぃぃぃ!!」
 エレブーの腹に全力の毒突きがヒット
エレブー「ぐ……あ……!」
 エレブー、後ろに飛んでいく
ドラピオン「豪快に飛んで行きやがった。これであいつはしばらく立てねえな。ご愁傷サマ」
 ドラピオン、自信満々に背を向け退治しようとする
 と、その時後ろから小さく叫び声が聞こえてくる
ドラピオン「何勘違いしてんだ!」
 声が聞こえ、ドラピオン振り返る
ドラピオン「……は?」
エレブー「俺はまだ! やられてねぇぇ!」
 エレブー、まるでロケットのようにドラピオンのもとへ飛んでいく
ドラピオン「……はぁ!? さっきあいつは俺の攻撃を受けて吹っ飛んだはず……!
 ……!」
 ドラピオン、凹んだネットに目がいく
ドラピオン(まさか……こいつ、ネットをクッション変わりにしてこっちまで飛んできたってのか!? 俺の攻撃も利用してたってことかよ……!)
エレブー「ここまで勢いがつけばいくらお前でもひとたまりもねえよなあ!?」
ドラピオン「く……!」
エレブー「クロスチョォップ!!」
 クロスチョップ直撃
ドラピオン「グアア……ッ!」
 ドラピオン、吹っ飛ばされて倒れる
エレブー「どうだ見たか俺の攻撃! さすがのお前でもひとたまりも……」
ドラピオン「ヒヒヒ……その程度か? まだまだ俺は……戦えるぜぇ!?」
 ドラピオン、悠々と立ち上がる
エレブー「!?」
ドラピオン「さぁて……俺をおちょくったこと後悔させてやる……覚悟はいいかァ!?」
エレブー(ウソだろ……これでもダメなのかよ……って、ん?)
 エレブー、何かを発見する
エレブー(いや、まだいける! 俺の攻撃は無駄じゃなかったってこった!)
 そして、勝利を確信する
エレブー「ああ、いつでも覚悟はできてるぜ! ただし、倒される覚悟じゃねえ」
エレブー「お前を倒してやるって覚悟さ!」
 エレブーに挑発され、さらにドラピオンの怒りが増す
ドラピオン「上等だよ……なら、二度と立てなくなるぐれぇメキョメキョにしてやんよ!」
エレブー「へへ、スキだらけだぜ」
 エレブー、ドラピオンの攻撃の合間を縫い、クロスチョップが直撃した部位に拳をぶつける
エレブー「雷パンチ!」
ドラピオン「ぐ……ぐおおおおお!」
 雷パンチが直撃し、しびれながら悶絶するドラピオン
ドラピオン(何故だ! 何故効いた! 俺の皮膚が! こんな雷パンチなんかにィ……!)
エレブー「俺のクロスチョップ、お前はその程度っつったよな?」
ドラピオン「それが……どうしたァ!」
エレブー「それがその程度じゃあなかったんだなー。よく見てみろよ、お前がさっき攻撃を受けたところをよ!」
ドラピオン「なに、が……。 !」
 ドラピオンの皮膚にヒビが入っている。
ドラピオン「俺の、皮膚に……ヒビが!」
エレブー「さっきの俺のクロスチョップはお前を倒せなくともお前の皮膚を破壊することぐらいはできたんだよ。
 そこに雷パンチをぶつけりゃ、どうなるかわかるよな?
 これでお前にダメージを与えられたぜ! 麻痺のおまけつきでな!」
ドラピオン「ぐ……くそ……こんな、やつにィ!」
エレブー「雷パンチ!」
ドラピオン「グアアアアアアアアッ!」
 ドラピオン、気絶
エレブー「ヘヘッ、俺の勝ちみてーだな」

場面転換

 場面は変わってルカリオ対ケンタロス。会場に煙があがっている
ケンタロス「ふ……さすがに雷の速さには対応できなかったようだな……」
 煙が晴れるが、目の前にルカリオはいない
ケンタロス「おや、いない……私の攻撃で蒸発でもしたか……?」
ルカリオ「どこを見ている? 後ろだ!」
 ルカリオ、ケンタロスの背後に
ケンタロス「!」
ルカリオ「波動弾!」
 波動弾ヒット
「ぐっ!」
ルカリオ「影分身で間一髪かわせたんだ。雷雲に気づかなかったら危なかったがな」
ケンタロス「なかなかやる……しかし俺の攻撃はこんなものでは……」
ルカリオ「攻撃? もうさせるわけないだろう」
ケンタロス「!?」
ルカリオ「波動弾!」
ケンタロス「ぐおおおっ!」
 波動弾をケンタロスに向かって何発も撃ち続けるルカリオ
ルカリオ「貴様がどれだけ動こうが、この波動弾は逃がさない!」
ケンタロス「ぐおおお! なかなかやる!
 こうなったら、攻撃を、受けながら、こっちも、最大級の、攻撃でっ、迎え撃つ、だけっ!」
ルカリオ「! 倒れないだと!」
ルカリオ(波動弾をあれだけ受けてまだ立ち向かうとはなんてタフネス……しかし!)
ケンタロス「破壊光線!」
 強烈な光の光線がルカリオへと向かっていく
ルカリオ「真空……波動弾!!」
 破壊光線と真空波動弾がぶつかり合い、そして光る
ルカリオ「くっ……!」
ケンタロス「ぐっ! ぐあああ!」

 光が収まる頃には、二人満身創痍で立ち尽くしている
ケンタロス「……く、ああっ……!」
 一瞬笑みを浮かべたケンタロス、力尽き倒れる
ルカリオ「悪いな、私の勝ちだ」

場面転換

○ロビー

ヤミカラスE「試験おつかれさまでした。では、合格者を発表いたします」
エレブー「……」
ルカリオ「……」
ピカチュウ「……」
 息を飲むピカチュウ
 ボードには「エレブー 筆記D バトルA」「ルカリオ 筆記B バトルA」と書かれており、その隣に合格の文字
ピカチュウ「や……」
ピカチュウ「やったー!」
エレブー「ま、当然だな」
ピカチュウ「ルカリオ、エレブー、よくやったよ! これで、これでワールドカップに出場できるんだ!」
ルカリオ「……ああ」
 喜ぶピカチュウ。その遠くでなにやら納得のいかなそうな様子のエレブー
エレブー「……」
エレブー「……物足りねぇ」

アイキャッチ

《Bパート》
○受付

ヤミカラスA「これが合格の証であるバッジとなりますー」
 受付のヤミカラス、二人分のバッジを渡す
ピカチュウ「バッジ、ゲットだぜ!」

 ピカチュウ、意気揚々と施設を後にしようとする

ピカチュウ「いやー、これでワールドカップへの出場権を獲得したわけだけど……」
ルカリオ「ああ」
エレブー「おぅ」
ピカチュウ「……あのさ、もっと喜ぼうよ。せっかくポケモンバトルワールドカップに出場できるんだからさ」
エレブー「……やっぱいいや。こんなんで出場しても嬉しくねえし。
 それにザングースの野郎は実力でジムバッジをゲットしてくんだろ。それで俺はこんな試験受けて出場しましたーってんじゃザングに笑われちまう。
 それなら、俺だってジムに挑戦して実力で出場権を勝ち取ってやる! 俺、これ返してくるわ」
ルカリオ「私も、同意見だな。このままでは、リオルに顔向けできん」
 二人、踵を返し受付へ向かう
ピカチュウ「ちょっと! せっかく9万ポッケも出して受けたのに……それに二人ともバトルでボロボロじゃん! それも無駄になるんだよ! いいの?」
エレブー「無駄じゃねえよ」
ルカリオ「ああ。バトルで得た経験は無駄なんかじゃないさ。ジム戦だってそうだ。それにピカチュウ」
ピカチュウ「え?」
ルカリオ「お前は、本当にそれで満足か? ひとつの試験に合格しただけで、それでひとつのゴールになるのか?」
ピカチュウ「そ、それは……」
ルカリオ「たったひとつ資格で得たゴールより、数多の努力と経験で培ったゴールのほうが、大きな意味を持つ。私はそう思っている」
エレブー「ルカリオの言う通りだぜ」
 エレブー、ピカチュウの頭を押さえながら
エレブー「俺アタマいいことは言えねえけどさ。いくら転んでも躓いても立ち上がって走り続ける。その方が男ってカンジだろ?」
ピカチュウ「……まったく。しょうがないね。君たちの熱弁に免じて今回はワガママに付き合ってあげる。それにボロボロになってまでこのバトルに勝てたんなら、ジム戦なんて、楽勝でしょ!」
エレブー「……ああ!」
ピカチュウ「……僕、どうかしてたな。あの受付の言葉にいいように乗せられて有頂天になって……僕恥ずかしいよ」
ルカリオ「……!」
エレブー「気にすんなって! じゃさっそく——」
ルカリオ「ピカチュウ。お前、今何と言った?」
ピカチュウ「え? 受付の言葉にいいように乗せられて……」
エレブー「お前、何言われたんだ?」
ピカチュウ「いや、ここに合格すれば優勝間違いなしとか、合格者はこれからの人生だいぶ有利になるとか……
 最初は冗談半分に聞き流してたんだけど……だんだんそれが魅力的に思えてきて……高いお金支払ってでも受ける価値がある、なんて思っちゃってさ……」
ルカリオ「ピカチュウ……お前、そいつにうまく乗せられたんじゃないのか? その、受付に」
ピカチュウ「…….え? だから、そう言って」
ルカリオ「そうそれだ。その受付は、私たちに試験を受けさせたいがために口先八丁で、お前を乗せたのではないか?」
 愕然とするピカチュウ
ピカチュウ「え? じゃあ、僕……」

受験者「話が違うじゃないですか!」
リングマ「うるせぇ! だから何度も言っただろ!」

 ルカリオ、声のする方を見る
 なにやら二人が言い争っている
受験者【アドリブ】
リングマ【アドリブ】

ルカリオ(あいつ……私達が受ける前に渋っていた……まさかあいつも……)

リングマ「ちょっと後の話は裏でしようぜ」
受験者「いたた! おい、やめろ!」

ピカチュウ「……何、今の」
ルカリオ「どうやら穏やかではないようだな。私達もこっそり後をつけよう」
ピカチュウ「う、うん!」
エレブー「なんだなんだァ?」

場面転換

○施設裏

受験者「話が違うじゃないか! あんたらはここに合格すればワールドカップの出場権を得られるって言ったよな!
 合格したから運営に申請しようとしたら……」
受験者「そんな制度はないと言われたぞ! どうなってるんだ!」

 ピカチュウ、受験者の言葉で騙されていたことに気づく
ピカチュウ「……!」
ルカリオ「やはりな」
エレブー「なんだなんだ? 姉ちゃんでもいたか? ……ん」

受験者「ふざけるな! こんなのサギだ! 警察につうほ……むぐっ!」
 リングマ、受験者の口を腕で塞ぐ
リングマ「おっと、秘密を知られちゃ黙っちゃおけねえ。お前には教育が必要だな。
 なに、教育っつっても痛めつけて痛めつけて痛めつけてタテつけなくなるぐらい痛めつけるぐらいだけどな!」
受験者「!!」
リングマ「さーて……まずはぁ……一発目ぇ!」
 リングマ、受験者に腕を振りかざす
受験者「……!」
 受験者、大怪我を覚悟し目をつぶる
が、攻撃はやってこない
受験者「?」
 受験者はおそるおそる目を開ける
 そこにあったのはルカリオがリングマの腕を掴んでいるところだった
リングマ「ぐぐ……なんだテメェ」
ルカリオ「口先八丁で人を騙し金を奪い取り、騙されたことに気づいた相手を制裁し……か。下衆の極みだな。
 今まで貴様らが検挙されていないということは、貴様らは合格者を全員潰してきたな? この受験者のように!」
リングマ「ああそうだよ。ここのオーナーであるドンカラス様の命令だ! ドンカラス様は報酬に金をたんまりくれるからな! こんな汚れ仕事も朝飯前さ!」
ルカリオ「金に目が眩み徳すら失ったか……貴様に、拳を振りかざす価値など……ない!」
 ルカリオ、リングマを背負い投げで倒す
リングマ「ぐ、あ……!」
 リングマ、すぐさま立ち上がり臨戦体制を取る
リングマ「テメェ、俺たちにタテつくとはいい度胸だなぁ!」
ルカリオ「やれやれ、反省の色すらなしか……仕方ない、相手になってやる」
リングマ「反省なんて、するわきゃねえだろおおおぉ!」
ルカリオ「波動弾!」
リングマ「うぐあああああぁ!」
リングマ、一発KO
ルカリオ「ぬるいな」
受験者「あ、ありがとうございます」
ルカリオ「例などいい。こうなったらとことんまでやるしかないな」
 様子を見ていたピカチュウ、遅れてエレブーがやってくる
ピカチュウ「ルカリオ!」
ルカリオ「ピカチュウ、エレブー」
エレブー「待てよピカ……うわなんだこりゃ」
ルカリオ「ワールドカップ検定試験など詐欺だ。このリングマが動かぬ証拠。まずはこいつを拘束する。二人のうち誰かヒモを持ってきてくれないか」
エレブー「……!」

場面転換

 リングマ、縛られてうつむいている
ルカリオ「話はこれで終わりか?」
リングマ「アァそうだよ! 全部言ってやった文句あっか!」
エレブー「そんなこったろうと思ったぜ。どうもおかしいと思ってたんだ」
ルカリオ「ああ。これは列記とした犯罪だ。ならば、被害者を増やさぬよう、それを絶つまで!」
ピカチュウ「……うん、そうだね」
ルカリオ「ピカチュウ?」
 ピカチュウ、怒りの炎に燃えている
ピカチュウ「だってさ! 4万5千ポッケだよ!? 二人合わせたら9万ポッケ!
これをこんななんの意味もない鉄くずふたつと交換させられたなんて、今思い出しても腹が立ってきた! キーッ!!
 エレブー、ルカリオ、そのドンカラスってやつを懲らしめてやろうよ! そうじゃないと僕の気がおさまらない!」
エレブー「ははっ、ピカチュウのやつ、いつになくやる気だな」
ルカリオ「……」唖然としてピカチュウを見るルカリオ

場面転換

○ドンカラスの部屋
レパルダス「ドンカラス様、本日の中間売上が出ました!」
ドンカラス「おおそうか、よくやったぞ皆のもの」
ペルシアン「ドンカラス様今日も大儲けでしたね!」
ドンカラス「ワールドカップ検定試験があると騙してガッポリ大儲け! 金で試験管兼用心棒も雇ってトラブルも暴力で解決!
そして何よりワールドカップを目指すヤカラが減ってライバルを一掃できる! なんて効率のよい戦い方だろうねえ!」
ドラピオン「ワールドカップで優勝するのはドンカラス様で決まりだぜ! 金と力さえありゃジムなんて楽勝よ!」
ケンタロス「ああ。そういやリングマがいないようだが」
ドラピオン「あいつのこった。また反抗する受験者をボコにしてんだろうぜ」
ケンタロス「そうだな、フフ……」
 高笑いするケンタロスとドラピオン
それを見て怒りに震えているドンカラス
ケンタロス・ドラピオン「(笑い声)」
ドラピオン「たわけ! 貴様ら受験者程度にやられおってからに! 少しは反省せい!」
ペルシアン「そうよそうよ!」
レパルダス「反省しなさい俗物のくせに!」
ドラピオン「すまねっす、ドンカラス様」
ケンタロス「そうですよ、あんな規格外のバケモン……」
ドンカラス「まあいい、仕事に戻れ、今日もガッポガッポ……」
ヤミカラスE「ぐああっ!」

 ドンカラスの仲間がやられ、ドアを破り吹っ飛ぶ
 ドアの前にいるのはエレブーたち

ペルシアン「あんたたち誰!?」
レパルダス「ドンカラス様の前で無礼であるぞ!」
ドンカラス「き、貴様は!」
エレブー「よくも僕たちを騙してくれたな!」
ルカリオ「貴様らの不埒……見過ごすわけにはいかない!」
エレブー「っつーわけで、さっそくお縄についてもらおうか!」
ケンタロス「あーっ!」
ドラピオン「あいつだ! 俺らを倒した受験者!」
ドンカラス「ほう、彼奴らがその受験者か。よし、ワシに刃向かう不届き者を潰して来い」
ドラピオン・ケンタロス「え!?」
ケンタロス「いやいやいや! 私達あいつらにやられたんですよ! 無理ですって!」
ペルシアン「あんたら用心棒のくせにドンカラス様の命令に逆らう気!?」
レパルダス「俗物はどこまで俗物なのかしら!」
ドラピオン「うるせー腰巾着のメスどもが!」
ドンカラス「いやならもう金は出さんもんねー」
ドラピオン・ケンタロス「!」
ドラピオン・ケンタロス「ぐぐぐ……」
 ドラピオンとケンタロス、捨て身でエレブーたちに向かっていく
ドラピオン「チクショウこうなりゃヤケだ!」
ケンタロス「ウモーッ、覚悟しろおぉーっ!」

エレブー「雷パンチ!」
ルカリオ「波動弾!」
ドラピオン・ケンタロス「ぎゃああああーっ!」
 即倒されるドラピオンとケンタロス

ドンカラス「ちっ、使えぬ奴らよ。ヤミカラス! ペルシアン! レパルダス! 彼奴らをひっとらえろ!」
ヤミカラスたち「アイアイサ!」
ペルシアン「仰せのままに!」
レパルダス「ドンカラス様に楯突く者は容赦しない! おとなしくやられちゃいなさい!」
 大量のヤミカラス・2人の秘書、エレブーたちに向かっていく
エレブー「へっ、上等だ……!」
ルカリオ「こんな奴ら、私の敵ではない」

エレブー「豪拳!」
ルカリオ「真空波動弾!」
ヤミカラスたち・レパルダス・ペルシアン「うぎゃああああーっ!」
ヤミカラスの大群と秘書、まとめて吹っ飛ばされる

ヤミカラスA「いたーい……」
ヤミカラスB「すんませーんボスー」
ヤミカラスC「こいつら強すぎ……」
ヤミカラスD「い、痛いよぉ、助けてママー……」
ヤミカラスE「申し訳ございませ、ん……」
ペルシアン「ぐぐ……嘘でしょ……」
レパルダス「た、ただ者じゃあ……ない……」
 うめきながら倒れている部下たち
 その様子をみて唖然とするドンカラス
ドンカラス「……うそ?」

エレブー「嘘じゃあねーんだなー、これが」
ルカリオ「あとは貴様だけだ。貴様一人でも戦うか?」
ドンカラス「フフ……もちろんだとも。ワールドカップ優勝候補のワシの実力、とくと見よ! つじぎり!」
 エレブーにつじぎりがヒットする
エレブー「……!」

ドンカラス「どうだ見たかワシのつじぎりの味は……」
ピカチュウ「エレブー!」
エレブー「……まあまあってとこだな。でも、あのドラピオンよりは弱かったけどな」
 エレブー、平気な顔をしている
ドンカラス「えっ」
ピカチュウ「エレブー!」
ルカリオ「フッ、どうやら貴様は金で用心棒を雇ったようだが、その用心棒よりも弱いとはな……それが貴様の金に溺れ鍛錬を怠った末路だ。自業自得だな」
ドンカラス「ぐぐぐ……」
エレブー「じゃ、次はこっちから行くぜ……」
ドンカラス「ちょま、待ってくれ! 話せばわかる! 金ならいくらでも!」
エレブー「待たねえよ! 雷パーンチ!」
 雷パンチがドンカラスにヒット
ドンカラス「キエエエェェーッ!」
 黒焦げになり部屋の壁に激突するドンカラス
ドンカラス「ぐぐ……ちくしょう……
 ……ん?」
 悶えるドンカラスの目の前にはものものしい雰囲気のピカチュウ
ドンカラス「なんだ? ワシの仲間になる気になったか?」
ピカチュウ「……して」
ドンカラス「……は?」
ピカチュウ「お金返して! 全部返して! 9万ポッケ、みんなから奪ったお金も全部ぜーんぶ! 返せーッ!」
 ピカチュウ、ドンカラスの胸ぐらを掴んで振り回している
ドンカラス「わ、わわわわわ、わーった! 返す返す! 返すから……」
ドンカラス「許してくれーっ!」(エコー)
 カラスの鳴き声
 フェードアウトし場面転換

ドンカラス一味「(うめき声)」
エレブー「じゃ、こいつらは俺たちが警察に突き出してくっから、お前らは旅を続けてくれよな」
受験者「あんたらがいなかったら俺たちは泣き寝入りしてるとこだったぜ、ありがとな」
ドンカラス「くっそぉ……ただで済むと思うなよ! いつか仕返ししてやるからn……」
受験者「うっせえよ詐欺野郎」
 受験者、ドンカラスを殴る
ドンカラス「ギャヒン!」

エレブー「一件落着、だな」
ピカチュウ「一時はどうなることかと思ったよ……
 ……エレブー、ルカリオ」
エレブー「なんだ?」
ピカチュウ「ゴメン! 今日は僕が悪かった! 甘い言葉に騙されて、二人の意思も無視して強行して……僕どうかしてたよ!」
ルカリオ「……まあ、何事もなく終われたのだし、いいじゃないか」
エレブー「そうそう! これも経験。ってな!」
ピカチュウ「二人とも……ありがとう!」
 ピカチュウ、二人に飛びつく
ルカリオ「わっ」
エレブー「おいピカチュウ!」
エレブー・ピカチュウ・ルカリオ「(笑い声)」
ナレーション「一難去ってまた一難。新たな経験とスリ傷を胸に、エレブー達はフエンタウンへと旅を続けるのだった!」
ED ポケットの中の夢

《Cパート》
〜後日談
○とある町の民宿
ピカチュウ「いやーあの時はどうなることかと思ったよ」
エレブー「まあな! でも俺達がいればどうってことなかっただろ?」
ピカチュウ「まあね。少しは見直したかな」
ルカリオ「そういや、あの後彼らは無事に警察に送られたのだろうか?」
エレブー「心配すんなって!」
ピカチュウ「そうそう」
エレブー「きっとあいつら今頃檻の中さ! な、ルカリオー!」
 ルカリオの体に触れるエレブー
ルカリオ「ひゃっ!?」
 ルカリオ、エレブーにパンチ
 打撃音
エレブー「いでーっ!」
ルカリオ「お前も檻の中に入れられたいか?」
エレブー「いつつ……うっかり触っちまっただけだろー!?」
ルカリオ「まあそれは冗談として」
エレブー「冗談かよ」
ルカリオ「そろそろニュースにでもなっているのではないか?」
ピカチュウ「そうだね」
 ピカチュウ、テレビを点ける
キャスター「ポケモンバトルワールドカップ詐欺の首謀者が逮捕されたことによるニュースの続報です」
ピカチュウ「お、噂をすれば」
キャスター「ワールドカップ検定試験と称して約27億3千万ポッケを騙し取ったとしてドンカラス容疑者が逮捕されました」
エレブー「ほら、心配なかっただろ?」
ピカチュウ「そうそう」
エレブー・ピカチュウ「(笑い声)」
キャスター「なお、ドンカラス容疑者には懸賞金がかけられており——」
ピカチュウ「え?」
キャスター「ドンカラス容疑者を警察まで届けた男女数名に懸賞金が分配されました」
ピカチュウ「ええーっ!」
エレブー「あいつお尋ね者だったのか」
ルカリオ「というか懸賞金を掛けられている身で奴はワールドカップに出場しようとしていたのか……? 見つかれば即刻逮捕なのにも関わらず……」
ピカチュウ「けけけけ、懸賞金なんて聞いてないよ!」
エレブー「そりゃあ、俺たちも始めて知ったし?」
ルカリオ「それに私達は金のために倒したわけではないだろう」
ピカチュウ「そ、そうだけど……」
ルカリオ「それに中には苦痛や恐怖を味わったものもいるのだ。そのぐらい、いいのではないか?」
ピカチュウ「むむむ……でも、納得いかなーい!」

受験者「詐欺師達を倒してくれた勇気ある人たちに感謝したいと思います。いつかあの人たちにまた会えたらその時は恩返しをしたいと、そう思っています!」

・END